胃食道逆流症(逆流性食道炎など)
胃酸を含む胃内容物の食道への逆流により胸やけ(胸のあたりがムカムカ・チリチリする症状あるいはやけるような感じ)・呑酸(胃酸を含む胃内容物が逆流して口が苦い) などの煩わしい逆流症状を呈する疾患を胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease :GERD)といいます1)。
その他、副症状としてのどのつかえ感・違和感(咽喉頭異常感症)、胸痛(非心臓性胸痛)、上腹部膨満感(胃が張る)、胃もたれ(胃に食べ物が残っている感じ)、早期飽満感(食事の途中でおなかがいっぱいになる)、胃痛、吐き気、頻回なげっぷあるいは継続する咳や喘息症状を合併することもあります2)。
また、GERDは食生活、睡眠障害、日常生活(仕事や家事)、気分への影響やQOL(生活の質)低下をきたすことが知られています3)。GERDの原因の多くは下部食道括約筋の一時的なゆるみ、つまり一過性下部食道括約筋弛緩(transient lower esophageal sphincter relaxion :TLESR) あるいは食道裂肛ヘルニア(胃食道接合部が継続的にゆるいあるいは胸部に胃が脱出)、食道蠕動運動が悪い、胃の圧力が上がる(早食い・食べ過ぎ、肥満、高齢者の亀背)により胃酸を含む胃内容物の逆流が引き起こされることで発生します(図1)。
内視鏡検査所見で、胃食道接合部(胃と食道の境)に粘膜障害(粘膜に傷ができた状態)があるGERDを逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症Erosive Reflux Disease: ERD)といいます。粘膜障害がなくても症状が出現する場合は、非びらん性胃食道逆流症(Non Erosive Reflux Disease: NERD)といいます。内視鏡所見での重症度は、ERDはGrade A~D、NERDはGrade M,N(写真1)で分類されます。
ERDのほとんどが、pH4以下の強酸が食道への逆流をすることにより出現します。特に重症ERDの場合は、吐血や狭窄(食道が狭くなる)などの合併症を起こすことがあるので、胃酸をブロックするお薬(プロトンポンプ阻害薬など)の継続的な内服が必要です。NERDは強い胃酸(pH4以下)の逆流は30-40%であり、非酸逆流(pH4以上)に伴い食道粘膜の過敏症により症状が出現する場合もあります。その他、逆流がなくても症状が出現する機能性胸やけがありますが、広義のNERDに含まれます(図2)。
その他、食道運動障害(アカラシア、びまん性食道痙攣症)、強皮症、機能性嚥下障害、好酸球性食道炎、運動障害性嚥下障害(球麻痺を伴う神経病)が原因となることがあります。
1)胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021
2)Isshi k. Esophagus,2021:18:684–692
3)Isshi k. J Gastroenterol (2019) 54:492–500